こんばんは。私は介護事業者向けのシステムのを担当しています。
今回は介護のシステムについてではなく、介護向けシステムを導入できるのか調べたかったので、自分なりにまとめました。
なぜ調べたか?
介護従事者の方にとって使いやすい良いシステムを作りたいな、と思っています。 ただ、どれだけ良いシステムを作ったとしても(作ろうとしても)ICTに対するコスト(導入/運用)はどうしても掛かります。 介護事業者がICTにどのくらいコストをかけているのだろうか、そもそも介護事業者にIT投資できるほどの資金的余裕がどのくらいあるのだろうか?と思い、今回調べてみました。
理解した点
介護事業所がICTにどのくらい投資しているか把握できるデータは見つけることはできませんでした。 しかしながら以下2点を理解しました。
1点目:厚生労働省が発表しているデータ
「介護事業経営実態調査」という資料があります。
この資料の目的は以下の通りです。
各サービス施設・事業所の経営状況を把握し、次期介護保険制度の改正及び介護報酬の改定に必要な基礎資料を得る。
その中で見たデータは収支差率と介護事業者における人件費の割合です。
収支差率
収支差率とは以下の計算式で求められます。
(介護サービスの収益額 - 介護サービスの費用額)/ 介護サービスの収益額
収支差率を一つの基準としてに介護報酬が決められます。収支差率が良いならば、改定時に介護報酬は下げることに繋がります。
以下資料から抜粋した介護保険サービス平均の年度別収支差率です。
平成28年度 概況調査 (平成27年決算) |
平成29年度 概況調査 (平成28年決算) |
平成30年度 概況調査 | 令和元年度 概況調査 (平成30年決算) |
令和2年度 概況調査 (令和元年決算) |
---|---|---|---|---|
3.8% | 3.3% | (データなし) | 3.1% | 2.4% |
※平成30年度 概況調査についてはデータを見つけることができませんでした。
収支差率が年々減っています。 収支差率≒利益率と置き換えるならば、介護報酬だけで賄うことは経営的に厳しく、介護保険サービス以外の事業で利益を確保していく必要があるのでは無いのでしょうか。
介護事業者における人件費の割合
収入に対する給与費の割合≒人件費と置き換えるならば、令和2年度実態調査(令和元年度決算)において平均して約6割ほどが人件費となっています。 人が人に対してサービスしている労働集約型産業なので、この数字はうなずけますが、ここまで人件費ってかかるんだな…と思いました。
補足; https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/kaigo/jittai20/dl/r02_kekka.pdf より詳細に常勤換算1人当たり給与費欄で確認することができます。
2点目:ICT導入に伴う行政の補助制度(2つ)
①ICT導入支援事業 これは厚生労働省が実施している補助金制度です。 https://www.mhlw.go.jp/stf/kaigo-ict.html ICT導入における補助金は職員数に応じて100万〜260万受け取ることがができます。補助率は令和2年度以降地方自治体(都道府県)が設定しています。
適用条件は以下の通りです
- 記録、情報共有、請求の各業務が一気通貫になる
- ケアマネ事業所とのデータ連携に標準仕様の活用
- CHASEによる情報収集に対応
- 導入事業所による他事業者からの照会対応
- 事業所による導入効果報告 等
②IT導入補助金2020(ITサービスデザイン推進協議会)
類型によって補助上限下限額・補助率が異なります。
類型 | 補助金額 | 補助率 |
---|---|---|
A類型 | 30万~150万円未満 | 1/2以内 |
B類型 | 150万~450万円 | 1/2以内 |
C類型-1 | 30万~450万円 | 2/3以内 |
C類型-2 | 30万~450万円 | 3/4以内 |
類型の違いは対象ソフトウェアの業務プロセスの数や、顧客への製品供給を継続する、従業員がテレワーク(在宅勤務等)で業務を行う環境を整備するなどにより異なります。
対象条件(一部)
- 中小企業・小規模事業者等であること。
- 民間企業は5,000万円以下かつ100人以下
- 医療法人、社会福祉法人は300人以下
- 日本国内で実施される事業であること。
- IT導入支援事業者が登録するITツールを導入する事業であること。
- 補助事業を実施することによる労働生産性の伸び率が、1年後の伸び率3%以上、3年後の伸び率9%以上、及びこれらと同等以上の数値目標を作成すること
ICT導入支援事業とIT導入補助金2020の違い IT導入補助金のほうが基準が厳しいように見受けられます。 ICT導入支援事業と違いIT導入補助金2020は介護産業以外も対象のためだと思います。
おわりに
介護事業書がICTにどのくらい投資しているかについてはわかりませんでしたが、補助制度を利用できることでITツールを導入できる機会があることがわかりました。
また、介護事業所は利益があまり出ていないことが改めてわかりました。
今後介護は需要>供給である状態は変わらないと思うので、ITツールを導入して効率的な介護により利用者のサービス向上につながるものを望みます。